ユリウス・カエサル語録

ローマ史

ユリウス・カエサルは共和政ローマ最後の時代を生き、帝政ローマの礎を築いた人です。
彼が暗殺され、後継者であるアウグストゥス(オクタウィアヌス)が初代皇帝となり、帝政ローマをスタートさせます。日本の戦国時代に例えると織田信長になぞらえることができるというのが私の持論です。(信長の天下統一事業を羽柴秀吉が引き継ぎ完成のような)

この辺りの詳しいことは、
ユリウス・カエサルと織田信長について考える(その1)
ユリウス・カエサルと織田信長について考える(その2)
のページに2回に分けてまとめました。

ちなみにカエサルの名は、ドイツで「カイザー(ドイツ皇帝)」の語源になり、ロシアで「ツァーリ(ロシア皇帝)」の語源にもなっています。

ローマを生まれ変わらせた英雄カエサルは、数々の名言・名文句を残しています。
そのあたりの語録をまとめてみました。

賽は投げられた

「賽」とはサイコロのことですね。
「サイコロは投げられた(もうこの賭けから下りることはできないよ)」ということです。

この発言をした当時、カエサルはガリアという地方の総督でした。ガリアは今のフランスあたりです。
カエサルは赴任地のガリアにいましたが、彼がローマ不在の間に、政敵のポンペイウスと元老院はカエサルを総督から解任、本国に戻ることを命じます。

カエサル絶体絶命のピンチ!戻らなければ反逆者、戻っても捕まってしまうことでしょう。
カエサルは軍を率いてルビコン川という川まで戻ります。当時のローマはルビコン川を本国と属州の境界線と定めていました。ローマは、どんな将軍にも軍を率いてルビコン川を渡ることを禁じていました。この法律を破ったものは反逆者として死罪、つき従う者も同罪として死罪となります。

カエサルは言います。
「ここを渡れば人間世界の破滅。渡らなければ私の破滅。進もう、神々の待つところ、我々を侮辱した敵の待つところへ。賽は投げられた」
軍を率いてルビコン川を渡ります。反逆罪は確定。後戻りはできません。生きながらえるためには、敵に勝利するしかありません。

ローマに迫るカエサル軍を見て、ポンペイウスと彼に味方する元老院議員はポンペイウスの地盤であるギリシャに逃げていきました。

このルビコン川のエピソードから、「後戻りできない決断をする」という意味で「ルビコン川を渡る」という成語が生まれました。

来た、見た、勝った

ポンペイウスを追ってギリシャに渡り、勝利したカエサル、今度はポントス王国の国王ファルケナス2世に戦争をしかけられます。「ゼラの戦い」と呼ばれる戦争です。

戦いはわずか4時間の戦闘でローマ軍の圧勝でした。
外国との戦闘に勝利した軍司令官のカエサルは本国の元老院に報告をしなければなりません。
その報告が「来た、見た、勝った」という”3語”のみのありえないほど短い報告でした。

簡略に報告というより、もはや元老院に対して何の敬意も払っていなかったのでしょう。
「はいはい、報告すりゃいいんでしょ。来たよ、見たよ(敵いたよ)、んで勝ったよ」というニュアンスでしょうか。
共和政という集団指導体制に疑問を持っているカエサルらしくもありますが、人を舐めきったこの態度が伝統を重んじる元老院議員などから反感を買い、自身のその後の暗殺に繋がるのかもしれません。

合理的ではないという理由でスーツを着ずにTシャツで通した某IT社長がいましたが、いつの時代もそういう人は伝統を重んじる人から反感を買うのでしょう。合理主義者の織田信長にも共通すると思います。

ブルトゥス、お前もか?

殺される際の最期の言葉も有名なものとなりました。
英語読みの「ブルータス、お前もか?」というセリフでピンと来る方も多いかもしれません。

ブルトゥスの父は彼が幼い頃に亡くなり、未亡人の母・セルウィリアはカエサルと恋仲となります。カエサルはブルトゥスの父親代わりとして彼を育てました。

恩人カエサルがポンペイウスと対立すると、なんと彼はポンペイウスの側に付きます。
彼は元老院議員という一人の政治家でしたが、彼の政治信条は共和政を信望する「共和政支持者」でした。個人的には恩があるカエサルですが、政治家ブルトゥスは政治信条からカエサルの側に付くことを否と判断したのでしょう。
そんなカエサルは部下に「戦場でブルトゥスを見つけたら、絶対に傷つけてはならない」と命令します。背いてもなお、カエサルは”息子”ブルトゥスに目をかけていたのです。

その後、ポンペイウスと袂を分かったブルトゥスはカエサルの陣営に下りますが、カエサルは彼に一切の罪を問わぬばかりか、側近の一人に加えました。その後もカエサルはブルトゥスを厚遇、彼を重要なポスト、法務官(司法を担当する役職)に任じます。重職です。

それでも政治家としての共和政支持者ブルトゥスは、独裁を強める”父”カエサルに付いていけなかったのでしょう。カエサル暗殺の計画に賛同することになります。

護衛を連れずに元老院に入ったカエサル、暗殺グループの中にブルトゥスを認めます。
その光景を見たカエサルは「ブルトゥス、お前もか?」と絶望します。

実の息子のように可愛がり、自分に背いてもなお、それを許して重要な職を任せ、その男にまた裏切られたカエサル、最期に何を思ったことでしょう。

その後、ブルトゥスはカエサルの後継者たちとの戦闘(フィリッピの戦い)に敗れ、自害して果てます。
彼は恩人を何度も裏切り続けた人でなしでしょうか。それとも、自分の信条を貫いた立派な政治家だったでしょうか。

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