ポーランド ウクライナに寄り添う理由とは?

近現代史

2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻しました。
多くの市民を巻き込む戦闘が続いています。

躊躇なく市民を巻き込むロシア軍の攻撃から逃れるため、多くの避難民がポーランドに避難しています。

10年ほど前、シリアで起きた内戦から逃れるため、多くの避難民がヨーロッパに大勢押し寄せたことがありました。
大勢の難民が流入したヨーロッパの国々では、一部の人たちが「移民反対」「移民排斥」を主張するようになりました。

そんな社会的空気の中で実施された選挙では、「移民排斥」を掲げる極右政党が躍進するケースが多数起こりました。
英国がEUから離脱したいわゆる”ブレグジット”の要因の一つも、ヨーロッパを通じて流入する難民の問題がありました。

現在、ポーランドはウクライナからの難民を暖かく迎えています。
そんなポーランドには、第二次世界大戦以降、ロシア(ソ連)に苦しめられてきた歴史がありました。

二大凶悪国に侵略されたポーランド

ポーランドは、ナチス・ドイツとソ連の二大凶悪国に侵略された歴史を持ちます。

1939年9月1日、ナチス・ドイツはポーランドに侵攻を開始しました。
未曾有の大戦争、第二次世界大戦の始まりです。

開戦前、ナチスはソ連と密約を交わしたとされています。
それは、”ポーランドの国土を二国で山分けする”という内容のものです。

ナチスのポーランドへの侵攻開始から16日後、1939年9月17日、ソ連も東からポーランドに侵攻を開始しました。

西からはナチス・ドイツという悪魔が、東からはソ連という悪魔が同時に攻め寄せてきたのです。
二大独裁国家から東西を同時に攻められては抵抗のしようがありません。

ポーランドは敗北し、西はナチス・ドイツに、東はソ連の統治を受けるようになりました。

両国の残虐な虐殺行為

両国は双方とも、ポーランド国内で人々を虐殺をしています。
西も東も、どちらの勢力の統治下であっても残虐国家の支配を受けることになったのです。

ナチス・ドイツ ”ユダヤ人問題の最終的解決”

ナチス・ドイツが各国でユダヤ人を虐殺したことは、あまりに有名で忘れてはならない歴史です。

ナチスはポーランドにも多数の強制収容所を作りました。
悪名高き「アウシュビッツ強制収容所」が作られたのはポーランドでした。

多くのユダヤ人をポーランド内の強制収容所に連行し、虐殺を繰り返しました。
ナチスは”ユダヤ人問題の最終的解決”と称して計画的にユダヤ人を殺害していきました。

ソ連 ”カティンの森事件”

一方、東側から侵攻したソ連も悪名高き独裁者、スターリンの指示のもと、多くのポーランド人を虐殺しました。「カティンの森事件」と呼ばれる残虐非道の事件です。

ソ連は、22,000人にも及ぶ無抵抗のポーランド人を殺害していきました。
自身の父親が事件の犠牲者となった映画監督アンジェイ・ワイダさんが監督を務めた映画が2007年に公開されています。

事件の残虐性から、同映画はR指定作品となっています。
原作となった小説も日本語訳されています。

ソ連は長らく、「ナチス・ドイツが起こしたもの」と主張し続けていましたが、1990年、ようやく事件の非を認め、ポーランドに謝罪しました。
ソ連崩壊後の1992年、ロシア政府はスターリンが署名した指令文書を公表しました。

戦後も続くソ連の支配

第二次世界大戦は、ナチス・ドイツの敗北で決着しました。

国土の西側をナチス・ドイツに支配されていたポーランドですが、東側を侵略したソ連が西側も支配、結局国土のすべてをソ連に支配されることになりました。

長い長いソ連の支配から解放され、ポーランドが民主化されるのは、1989年から始まる民主化運動を経て、ようやくのことでした。

「いつの日かポーランドの番が来る」

2022年現在、ロシアはウクライナを侵略しています。
ロシアは2008年にも、ジョージアの領土を狙って戦争をしました。この時、ポーランドのカチンスキ大統領(当時)はジョージアを訪問し、こう述べたそうです。

「きょうロシアに侵略されるのはジョージア、あすはウクライナ、あさってはバルト諸国かもしれない。そしていつの日か、ポーランドの番が来る」

ロシア軍事侵攻 次はポーランドか ウクライナへの連帯と危機感 駐日大使語る」(NHK)

大統領の懸念どおり、ロシアの野望は今、ウクライナに向けられています。
懸念していた予言どおりに展開しています。

第二次世界大戦以降、長らくロシア(ソ連)に支配されてきた歴史を持つポーランド。
今回のウクライナへの侵攻はとても他人事とは思えないでしょう。

日本もまたロシアの隣国

日本もまた他人事ではありません。
日本に最も近い外国はロシアです。北隣のロシア、そして西には中国というもう一つの軍事大国があります。
また韓国を挟んで北朝鮮という国も軍事志向がとても強い隣国の一つです。

これらの国々は、人命を軽視する独裁国家であるだけでなく、いずれも核兵器保有国でもあります。
日本はこのような危険な国々と物理的に近い関係にあるのです。

懸念されるロシアの友好国・中国の軍事行使

今回のロシアによるウクライナへの侵攻で、中国による台湾への軍事侵攻も現実味を帯びてきました。

台湾は日本にとって、貴重な民主的な隣国であるだけでなく、日本にとって生命線とも言える存在です。
台湾で何かが起これば(台湾有事)、食料・原油などを輸入に頼る日本の”海の補給路”、いわゆる”シーレーン”が危険になります。

日本への影響で考えれば、今回のロシアによるウクライナ侵攻以上の影響を与えることでしょう。

今回のロシアによるウクライナ侵攻は、遠い国の関係ない話ではないのです。

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