共通言語は覇権国家の言葉?

言葉

現在、共通の言語として多くの国の人が”英語”を学びます。

国が違う人同士が会い、交渉し、取引しようと思えば、どちらかが相手方の言語を話すか、共通の言語を話す、あるいは話せる人を雇って通訳をしてもらう必要があります。

多くの国が行き交い交渉する中で、最も地位の高い国の言語を共通語として用いるのは効率的な考え方です。でなければ、交渉する国の数だけ言葉を覚える必要がありますからね!

他を圧倒する力を持つ国を「覇権国家」と言ったりしますが、これまでの歴史でも、そう言った地位の国の言葉を人々は共通の言葉として使用してきました。

共通言語の歴史について調べてみました。

古代の地中海世界の共通言語・ギリシャ語

古代の「地中海世界」では、ギリシャが進んだ文化を持っていました。
都市国家が中心で連合を組むギリシャを覇権国家と呼ぶかは疑問ですが、文化的に発展しているギリシャの言葉、ギリシャ語は共通言語としての役割を地中海世界で担いました。

その後、台頭したローマでは、貴族は教養としてギリシャ語を学んだと言います。
貴族たちは子どもたちに家庭教師を付けてギリシャ語を学ばせたというのですから、今の英語教育とほとんど似たような感じですね!

覇権国ローマの言葉・ラテン語

ローマはどんどん大きくなり、属州を増やしていきます。
「すべての道はローマに通ず」という言葉は、インフラとしてのローマの道がいかに広く伸びていたかを表す言葉でしょう。

ローマの言葉であるラテン語は、ヨーロッパ世界の共通言語としての役割を担うようになります。
そして、ローマ帝国滅亡後もラテン語は生き続けます。

ラテン語は、キリスト教カトリック教会の公用語として使用されてきましたが、日常で使用されることがなくなった現在でも、カトリック教会の総本山・バチカンでは公用語としての地位を保ち続けています。

またラテン語は、ヨーロッパ中の知識層の共通言語としても使用され続け、今でも学術の世界では、学名をラテン語で付けるなど、その名残があります。

ちなみに、「コロナウイルス」の名称は、王冠を表すラテン語の「コロナ(corona)」、毒を表すラテン語の「ウイルス(virus)」で構成されています。
つまり、「コロナウイルス」はラテン語です。

他にも、普段私たちが使っている言葉にもラテン語は多く残っています。
少しだけ例を挙げると、以下のようなものがあります。

  • 午前を表すa.m.(ante meridiem)
  • 午後を表すp.m.(post meridiem)
  • 番号を表すNo. (numero) *ナンバーと読みますが、英語のスペルはnumber(oは付きません!)
  • 水を表すaqua
  • 自我を表すエゴ(ego)
  • 投げられるものを表すミッシレ(missile) → ミサイル

その他、なじみのある商品名や会社名などにもラテン語由来の名称が多くあります。

近現代の覇権国・イギリス&アメリカ

近代以降、イギリスが覇権国として世界中に植民地を所有するようになります。イギリスが支配したアメリカやオーストラリアなど、その他イギリスが支配した多くの地域で英語が話されるようになります。

世界を席巻する大英帝国(=イギリス)の言葉である英語、フランス語(あるいはスペイン語)というライバルがありながらも、国際共通語としての地位を確立します。
一方、通貨の世界でも、イギリスの通貨ポンドが信頼できる共通通貨(=基軸通貨)として機能します。

長く覇権国家として君臨したイギリスですが、2度の世界大戦で大きな被害を受け、その国力は大きく低下します。
代わりに覇権国としての役割を担うようになったのが、かつてイギリスの植民地であったアメリカ合衆国です。

アメリカも英語を母国語として使用する国の一つです。
英語が国際共通語として引き続き話されますが、基軸通貨はポンドに代わり、米ドルがその役割を果たすようになります。

英語はもともと「イギリス(国)の言葉(言)」ですが、覇権国はアメリカにバトンタッチ、現在、私たちは当然のようにアメリカ英語の発音・スペルを基準に英語を学んでいます。
(スペルの違いは例えば「センター(英:centre・米:center)」などがあります)

日本で「イギリスの英語」を学ぼうと思えば、”あえて”イギリスの出版局(ケンブリッジ大学出版局など)から発売されている本を買ったり、イギリスに留学したりするなどの努力が必要になるでしょう。

まとめ

異なる国の人がコミュニケーションを取るためには、共通の言語が必要になります。
それは今も昔も変わりません。

人々は、時代ごとで地域や世界をリードする国、覇権国の言葉を共通語として学んできました。

古代地中海世界ではギリシャ語が共通言語としての役割を果たしました。
ラテン語はローマ帝国滅亡後も、ヨーロッパの中で、教会や知識層の共通言語としての地位を保ち続け、その名残は現代でも多くあります。

近代以降ではイギリスが覇権国として君臨し、英語は世界の共通言語として機能するようになりました。
2度の大戦を経て国力を落としたイギリスに代わり、覇権国の地位を継承したのが、同じく英語を話すかつてのイギリスの植民地、アメリカ合衆国です。

通貨の世界ではポンドの代わりに米ドルが基軸通貨になりましたが、共通言語は英語が引き続き国際共通語としての役割を担っています。

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